Lawnbowls

ある在野の文学研究者の行動記録。

お仕事募集中です。ご依頼は 84oca75 (アットマーク) gmail.com へお願いします。
解題『ドリトル先生のサーカス』(1)──一文無しからの出発
 前回のエントリで解説したように、本作は前巻『郵便局』から直に続いているとする説と第1巻『アフリカゆき』の続きないし同巻の終盤を膨らませたエピソードとする二通りの説がありますが、この解説では原則として本編の記述との矛盾が少ない前者の説を採用します。

『ドリトル先生のサーカス』ジョナサン・ケープ版表紙
ドリトル先生のサーカス
ジョナサン・ケープ版表紙(1925年)

  本作は1924年にアメリカのF・A・ストークスより刊行され、翌1925年にイギリスでジョナサン・ケープより刊行されました。日本では1952年1月に井伏鱒二の訳で岩波少年文庫へ収録されたのが最初の紹介ですが、刊行順では前巻『郵便局』よりも半年ほど早く順序が逆転していました。『郵便局』と同様に、60年近く井伏訳が唯一の日本語訳だったのですが今年3月に角川つばさ文庫から河合祥一郎の新訳版が刊行されています。

 冒頭はドリトル先生の一行がアフリカからパドルビーの自宅へ帰って来て、船乗りに借りた船を壊したので弁償する為に金策をしなければならないという事情の説明から始まります。この場面で帰りに接収した海賊船の倉庫に最高級のイワシの缶詰が云々、とのやり取りがあるので『アフリカゆき』の終盤を思わせますが、あの時に大破した船は漁師町(コーンウォール?)からパドルビーへ帰るまでの間にオシツオサレツを6ペンスで鑑賞させて稼いだ収入で弁償して新しい船も買ったはずですし、前巻『郵便局』でアフリカへ行った際の船は借り物でなく買い切りだったはずです。帰り道のことは何も書かれていないので、バーバリ海賊団とはまた別の海賊団を懲らしめて以前と同じように船を接収したのでしょうか。謎は深まるばかりですが、この解説では『郵便局』第4部6章でダブダブが「またオシツオサレツを連れてサーカス巡業に……」と言っていたのが本巻の伏線であると解釈し、ファンティポからの帰りであると言う前提に立ちます。

 先生がイギリスへ戻って来たと言うニュースはすぐに動物たちの間で広まり、声がかすれたニワトリや爪が剥がれたイタチなどが続々と診療所へ押しかけて来たので、先生は休む間も無く診察に追われました。そこへ、猫肉屋のマシュー・マグが訪ねて来ます。マシューは先生が留守の間、ファンティポで郵便局の国内配達を手伝っていてロンドンへ戻るためデヴォン沖で先生の一行と別れたチープサイドに言付けた手紙を受け取っていて、なんとなく「先生が帰って来たような気がする」と思いオクスンソープ通りの家を訪ねると案の定、と言う訳です。
 先生は早速、金策のためにオシツオサレツを連れてサーカス団の巡業に参加したいが当ては無いかとマシューに相談しました。マシューは、ちょうどパドルビーの近郊で一番大きなグリムブルドンの町でブロッサム大サーカスが週末まで興行しているから覗いてみたらどうだろうと言い、次の日に先生とマシューはグリムブルドンまで出掛けることになったのでした。
| 84oca | ドリトル先生のサーカス | 21:54 | comments(0) | trackbacks(0) |

コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://lawnbowls.blog.bai.ne.jp/trackback/197757
トラックバック

CALENDAR
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND COMMENTS
RECENT TRACKBACK
  • 解題『ドリトル先生局』──『郵便局』と『サーカス』はどっちが先?
    Lawnbowls (08/05)
  • ヒュー・ロフティング伝(4)──ナイジェリア時代
    Lawnbowls (07/11)
  • 解題『ドリトル先生アフリカゆき』(8)──人種差別問題
    Lawnbowls (06/07)
CATEGORIES ARCHIVES LINKS PROFILE OTHERS