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解題『ドリトル先生の郵便局』(9)──チープサイド
 ファンティポの国内郵便を正常化する為にドリトル先生が呼んだロンドンっ子のスズメ・チープサイド(Cheapside)は予想よりも早くファンティポに駆け付けます。チープサイドの采配で国際郵便に比べて立ち遅れていた国内郵便は驚くような速さで正常化しますが、喧嘩っ早いこのスズメは何度も騒動を起こすのが玉に瑕でした。

ロンドンっ子のスズメ・チープサイド
ロンドンっ子のスズメ・チープサイド
ドリトル先生の郵便局』挿絵、ヒュー・ロフティング画)

 前巻『航海記』では顔見世程度の登場だったチープサイドですが、この巻では縦横無尽に暴れ回って読者に強いインパクトを与えます。まず、その喋り。原文からコックニー(Cockney)、つまりロンドンの労働者階級に特有の強いなまりが強調されており、井伏鱒二はこれをチャキチャキの江戸っ子が使うべらんめえ口調に置き換えました。これがチープサイドの気が強くて喧嘩っ早い性格にはまることと来たら、もう!
 そして、チープサイドという名前も実に秀逸です。チープサイド通りというのはロンドン中心街、テムズ川の北を走る通りの名前で、まもなく開幕するロンドンオリンピックのマラソンコースにもこの通りが組み入れられています。



 チープサイドが巣を作っているのはこの通りの南側にあるセント・ポール大聖堂にある聖エドモント像の左耳とされていますが、残念ながら実在のセント・ポール大聖堂に聖エドモント像は無く、聖エドモントのステンドグラスならば存在すると言うことです。

 チープサイドが国内郵便の現場監督に就任するやいなや、日頃からロンドン中のスズメの群れを束ねる采配の冴えでファンティポの市街に住む小鳥たちに作業分担させて驚きの速度で正常化を進めて行きました。しかし、このスズメは──『航海記』で紫極楽鳥のミランダを中傷した時もそうでしたが──とにかく気が短く、何度も騒動を起こしてはドリトル先生を怒らせました。特にココ王が可愛がっている白孔雀が気に入らないようで、何度も挑発したり仲間のスズメと徒党を組んで尻尾の羽を引き抜いたりの狼藉を繰り返し、遂に堪忍袋の緒が切れた先生はチープサイドに首を言い渡したのでした。
 しかし、チープサイドが首になった途端にせっかく正常化した国内郵便はトラブルが多発する元の黙阿弥に戻ってしまいます。チープサイドの方も、何だかんだ言いながら先生が自分を必要としていることはわかっていたので、イギリスへ帰ってしまうことはなく数日が経つと何食わぬ顔で郵便局に戻って来ました。
 そして、チープサイドは郵便局に戻って来てからも依然として白孔雀とは反りが合わず、インク瓶を投げつけるなど乱暴な行動を繰り返しては月に1度は首になり、その度に国内郵便が乱れて協力が必要になった頃合を見計らって戻って来ると言うパターンを繰り返すのでした。
| 84oca | ドリトル先生の郵便局 | 22:34 | comments(0) | trackbacks(0) |

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