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解題『ドリトル先生の郵便局』(6)──動物たちの楽園
 ファンティポ港の沖合に浮かぶ無人島へたどり着いたドリトル先生は、そこで既に絶滅したと思われていた恐竜と出会います。現地の人々が竜のたたりを恐れて近付こうとしないその島は、動物たちの楽園だったのです。

草食恐竜ピフィロソウルス
草食恐竜ピフィロソウルス(『ドリトル先生の郵便局』挿絵、ヒュー・ロフティング画)

 先生とジップは港から無人島まで泳ぐ途中に危うく溺れそうになりますが、海の底から巨大な爬虫類が現れて先生たちを無人島の浜辺に引き上げてくれました。先生は目の前にいる首長の恐竜は太古の昔に絶滅したと考えられているクイフェノドクス(quiffenodochus)ではないかと見ますが、その恐竜が言うには自分はクイフェノドクスと遠縁のピフィロソウルス(piffilosaurus)で、クイフェノドクスは2000年前に絶滅したと言うことでした。

 ここで出て来るクイフェノドクスやピフィロソウルスと言うのは架空の恐竜ですが、挿絵を見る限りアパトサウルス(ブロントサウルスの別名で有名)と同種のようにも見えます。アパトサウルスは19世紀にアメリカの古生物学者、オスニエル・チャールズ・マーシュ(Othniel Charles Marsh, 1831 - 1899)が発見し、20世紀初頭には広く知られていました。前巻『航海記』で先生はダーウィンを余り高く評価していない節がありましたが、本作の時代設定である1830年代後半はまだ『種の起源』(1859年刊)が発表されるよりも以前で、後の進化論に繋がる考え方そのものはキュヴィエやラマルクらの提唱により学界の一部に存在していましたが、自明のものではありませんでした。それから80年ほど経過し、ロフティングが本作を執筆した1920年代前半には(アメリカ南部などの宗教保守的な思想が強固な地域を別にすれば)進化論は既に自明のものとなっていたので、その時代の観点から進化論の生き証人をドリトル先生に引き合わせたのは書き手にとってごく自然な成り行きだったのでしょう。

 結局、ファンティポの人々が「カカブーチ王の太后が化身したのだ」と思っている竜の正体はこのピフィロソウルスで、そのピフィロソウルス自身はバナナが好物のおとなしい草食恐竜でした。手つかずの自然が残る動物の楽園を守りたいピフィロソウルスは人が近付く度に霧を吐いて威嚇し、それを繰り返している内に現地の人々は太后が怒って火を吐いていると思い込んで島へ近寄らなくなってしまったのだそうです。当の太后は無人島でも誰かに喋り続けないと気が済まなかったようで、動物たちを相手に延々と一人言を繰り返すのにたまりかねたピフィロソウルスはアフリカ南部のコンゴまで太后を連れて行き、耳の遠い王様と再婚させたと言うことでした。
 それから1ヶ月間、先生は国内郵便を正常化する作業の合間に何度も無人島へ出かけ、島に住む動物たちの治療や相談に当たったりスキマーと国際郵便のネットワークについて打ち合わせを重ねたりしました。その結果、国際郵便局は無人島を拠点に渡り鳥が運ぶ便宜を考慮して屋形船を新造し、無人島の沖合に停泊させることになりました。いよいよ、画期的なファンティポ郵便局の国際郵便が開業する日が秒読み段階に突入したのです。
| 84oca | ドリトル先生の郵便局 | 19:48 | comments(0) | trackbacks(0) |

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