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解題『ドリトル先生の郵便局』(1)──冬休みの終わりに
 本作は第2巻『ドリトル先生航海記』の続きではなく、スタビンズ少年がドリトル先生に弟子入りする前の話となります。詳細は続巻『サーカス』の冒頭でも解説する予定ですが、本作が時系列順でどの時期に当たるかは様々な意見があり、確実なことは「第1巻『アフリカゆき』よりは後、第7巻『月からの使い』よりは前」としか言えません。

『ドリトル先生の郵便局』ジョナサン・ケープ版表紙
ドリトル先生の郵便局』ジョナサン・ケープ版表紙(1924年)

 本作は1923年にアメリカのF・A・ストークスより刊行され、翌1924年にイギリスでジョナサン・ケープより刊行されました。日本では1952年に井伏鱒二の訳で岩波少年文庫へ収録されたのが最初の紹介となり、この際の刊行順は続刊の『サーカス』よりも後でした。以後、60年近く井伏訳が唯一の日本語訳だったのですが2011年に角川つばさ文庫から河合祥一郎の新訳版が刊行されています。

 本作は時系列順では『航海記』よりも以前(但し、本文中で述べられている世界最初の切手「ペニー・ブラック」の発行年を史実と同じ1840年と仮定し『航海記』より後と見る説も存在する)である可能性が高いのですが、作品のテーマは『航海記』の後半でドリトル先生がクモサル島の王に祭り上げられてしまった後の展開を継承しているとも言えます。しかし、本作では植民地支配の不条理を肯定的・否定的いずれの側面からも描き出すようなことは余り無く、穏便かつ平和裏にアフリカの小さな王国が破綻してしまった郵便制度の立て直しを通じて発展して行く過程が描かれます。それは同時に王国が前時代的な貧困ビジネスの象徴である奴隷貿易から脱却して経済的に自立の道を歩む過程でもあり、1ページごとにロフティングがナイジェリアの鉄道建設に参加して直面した植民地支配の現実に対する強烈なメッセージが込められているように感じます。

 物語の冒頭は、アフリカ生まれでイギリスの寒い冬が苦手なオシツオサレツが先生に「ほんの短い間、西アフリカへ出かけませんか」と進言する所から始まります。先生はオシツオサレツとジップ、ダブダブ、ガブガブ、トートー、白ネズミを連れて西アフリカへ航海に出て、オシツオサレツは懐かしい牧草地でのんびり草を食べながら冬休みを満喫したのでした。そして、冬休みを終えてイギリスへ戻ろうとした矢先に一羽のツバメが飛んで来て、先生にある異変を知らせたのでした──。
| 84oca | ドリトル先生の郵便局 | 14:42 | comments(0) | trackbacks(0) |

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