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解題『ドリトル先生航海記』(16)──海カタツムリ現る
 全く気が進まないままクモサル島の王に推挙されてしまったジョング・シンカロット王ことドリトル先生。退位を申し出ようにもなかなかその機会は訪れず、次第に自分を慕う島民への愛着も湧いて来ます。そんなある日、ポリネシアは島の入り江で以前に銀色フィジットから聞いたあの巨大生物を発見したのでした──。
蝶を追いかけるシンカロット王
蝶を追いかけるシンカロット王(『ドリトル先生航海記』挿絵、ヒュー・ロフティング画)

 シンカロット王が即位後、最初に取り掛かったのは漂流前はクモサル島の沿岸部にあったポプシペテルの集落を内陸の高台に再建する作業でした。上水道や下水道の整備、煉瓦作りなどのインフラ整備がシンカロット王の指導で次々に進められ、ポプシペテルの町はテントが立ち並んでいた以前の集落とはすっかり様変わりしたのでした。
 町の建設が一段落した後もシンカロット王は学校を開いて自ら老若男女の島民に知識を授け、また揉め事を仲裁したり医師として島民を診察したりの多忙な日々を送りました。愛用のシルクハットも使わせてもらえず、僅かな自由時間を研究に当てて虫取り網を手に蝶を追いかける時も王冠が頭上にありました。
 こうして月日は流れ、シンカロット王の即位から2年が経ちました。スタビンズ少年もバンポもポリネシアもチーチーもジップも、最初は物珍しかったクモサル島の生活にすっかり飽き飽きしてしまいました。また、ロング・アローは島での用を終えてアンデスへ帰って行きました。
 そんなある日の早朝、島で地震が起きました。震源地と見られる入り江に様子を見に行ったポリネシアは興奮した様子で以前、英語で歌う魚の銀色フィジットが言っていた大ガラス海カタツムリを発見したとスタビンズ少年に伝えます。知恵者のポリネシアは、今のままだとイギリスへ帰ろうにも船が無い有様だが海カタツムリを説得すればイギリスへ帰れるのではないかと言い、相変わらず島民の求めに応じて惜しみなく西洋の文明を伝授するシンカロット王ことドリトル先生には内密で海カタツムリを説得する計画を立て始めたのでした。
 スタビンズ少年とポリネシアは脱出計画のことを伏せて先生を海カタツムリと対面させました。古代の貝類である海カタツムリの言語は難解で、間に様々な種類の魚や貝を挟んでようやく意思疎通が出来る有様でした。海カタツムリは銀色フィジットが言っていた通り、世界最深の海溝である「深い穴」に住んでいたのですがクモサル島が漂流をやめて現在地、つまり「深い穴」を塞ぐように沈降して来たので慌てて飛び出したものの、尻尾を挟まれてしまったのでした。それから長い月日の──何万年も生きているこのカタツムリの生涯から見ればごく短い時間なのでしょうが──悪戦苦闘の末に、ようやく尻尾にのしかかっていた島を払いのけたのが地震の原因だったのでした。先生は腫れ上がった海カタツムリの尻尾に手当てを施している間、スタビンズ少年とポリネシアは海カタツムリの回復を待って先生に気付かれないよう脱出計画の準備を進めることを確認しました。
| 84oca | ドリトル先生航海記 | 22:16 | comments(0) | trackbacks(0) |

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