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解題『ドリトル先生航海記』(13)──ロング・アロー救出
 クモサル島に到着したドリトル先生の一行は岩盤の崩落で遭難していた偉大な博物学の大家、ロング・アローを救出し、世紀の対面が実現します。
世紀の対面
世紀の対面(『ドリトル先生航海記』挿絵、ヒュー・ロフティング画)

 先生の一行はクモサル島へ上陸し、まずは島民が住んでいる集落を探しましたが近くに集落は無く、ひとまずジャングルを抜けることにしました。アフリカ生まれでジャングルの移動に手慣れたポリネシアやチーチーの道案内で一行は大きな危険に遭うことも無くジャングルの中を進みますが、途中で先生は希少種のカブトムシ・ジャビスリー(Jabizri beetle)を発見して捕獲します。そのジャビズリーの脚にはクモの糸で何か絵が描かれた葉っぱが括り付けられており、先生はその絵の意味を「鷹の頭の形をした山で岩盤が崩落し、洞窟に閉じ込められた人がいる」と解釈しました。そして、敢えて希少種のジャビズリーに手紙を託したのは「この珍しい虫を見た人が必ず捕まえるだろう」と考えてのことで、そう考えるのは博物学の大家、ロング・アローその人に違いないと推理します。
 特徴的な形でジャングルの中からもはっきり見えていた鷹頭山(Hawks' head Mountain)で岩盤が崩落した現場に到着すると、確かに絵手紙の通りとても3人では動かせそうにないほどの巨大な岩が洞窟の入り口を塞いでいました。しかし、大岩が乗った地盤はそれほど硬くなさそうだったので、ジップの発案により地面を掘って岩を地滑りで下に落とすことにします。この作戦は見事に成功し、地面を掘ると巨大な岩はバランスを崩して前のめりに倒れ、真っ二つに割れたのでした。
 そして、ドリトル先生は洞窟に閉じ込められていた博物学の大家、ロング・アローと世紀の対面を果たします。しかし、先生はインディアンの言葉を知らずロング・アローも英語を知らないので互いの意思疎通は上手く行きません。そこで、先生は様々な動物の言葉で語りかけますがやはりロング・アローには通じませんでした。ようやく、ワシの言葉で語りかけるとロング・アローに通じました。ロング・アローは先生ほど動物語を自由に操れないものの、鳥の言葉は習得していたのです。
 ロング・アローはこの洞窟にだけ生えている薬用のコケを採取する為にクモサル島へ渡り、島民の案内で洞窟に入ったところ岩盤が崩落して閉じ込められてしまったのでした。ロング・アローと共に救出された島民は何人かが衰弱していたものの命に別状は無く、全員がポプシぺテルの村に生還しました。

 先生とロング・アローという互いに尊敬し合っていた者同士が人種はもとより、言語をも超越して初めて対面するこの場面は本作における最大の名場面と言えるでしょう。本作も前作『アフリカゆき』も後年に一部の描写を以て人種差別的と指弾されることが多かったのですが作品の本質、ひいてはロフティングの理念がこの場面のように人種の相違を超越した敬意や友情にあると言うことが本作の刊行時も現在もいささかの揺るぎも無く多くの読者に伝わったからこそ、発表から90年以上も経った現在もなお読み継がれているのだと筆者は考えます。
| 84oca | ドリトル先生航海記 | 21:54 | comments(0) | trackbacks(0) |

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