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ヒュー・ロフティング伝(3)──ニューヨーク時代
『ドリトル先生』の作者、ヒュー・ロフティングは1912年から1921年までニューヨークに住んでいました。
 ヒューが最初に渡米したのは1904年にダービーシャーの寄宿校を卒業し、マサチューセッツ工科大学(MIT)へ留学した時でした。しかし、ヒューは1年でMITを中退しボストンでの生活は早々と終わりを告げてしまいます。イギリスへ帰国し、1907年に職業訓練校のロンドン・ポリテクニック(現在のウェストミンスター大学の前身校の一つ)を卒業して土木技師となったヒューは最初にカナダで金鉱の測量、その後にイギリス保護領だった西アフリカのナイジェリアと1902年に独立したばかりだったカリブ海の新興国・キューバで鉄道建設に当たったことは以前にも何度か紹介した通りですが、キューバでの仕事を終えてそのまま2度目の渡米に踏み切った訳ではなく、1911年の前半に一度イギリスへ戻っていることが同年の国勢調査記録より確認されます。この記録によれば両親や兄妹ら家族とロンドン西部のブレントフォードで同居しており、次兄のジョン・ヘンリーが父親の家業である積算士の仕事を継ぐ目処が立ったので独立を考えたのではないかと見られます。
 1912年にニューヨークへ移ったヒューは同年に知り合った5歳年上のフローラ・スモール(Flora Small, 1880 - 1927)と結婚します。ちなみにヒューの父母であるジョン・ブライアンとエリザベス夫妻も祖父母のジョン・トーマスとメアリー・アン夫妻もヒューとフローラ同様に、夫人の方が年上でした。フローラは生まれも育ちもニューヨークで、ヒューは1913年にこの結婚を理由としてアメリカ合衆国の永住権を申請しています。
 ロフティング夫妻は当初、ニューヨーク市北部のハドソン川上流に在るキャットスキル山の近くに居を構えていました。この頃に新聞や雑誌に紀行文やコラム、最初に書いた短編小説『排水溝と橋 Culverts and a Bridge』などを投稿しますが、これらの文章の内どの程度が採用されたのかは明らかではありません。
 1913年11月に長女のエリザベス(リン)、1915年9月に長男のコリンが生まれた後、イギリス陸軍の志願兵となって西部戦線で1918年に負傷し、送還先のロンドンへ家族を呼び寄せた1年後の1919年秋に再びニューヨークへ戻ることにします。この際、アメリカの永住権申請に際してイギリス国籍を放棄しなかったヒューはごく短期間、イギリス情報省のニューヨーク駐在員として働いていました。情報省は外交に関する情報収集やプロパガンダ工作を専門に行う中央省庁で、第一次世界大戦を機に設立され第二次世界大戦後まで存続しましたが、外務省(現在の外務連邦省)の下部組織でウィリアム・サマセット・モーム(William Somerset Maugham, 1874 - 1965)がスパイとして所属した情報局秘密情報部との業務内容重複などを理由に統廃合された後身組織の情報調査局は国内での政党工作発覚などの不祥事が相次いだこともあり、1977年に廃止されました。
 1919年にニューヨークへ戻ったロフティング一家は、1920年の国勢調査記録によると以前に住んでいたキャットスキルの南隣に当たりアイルランド系移民が多いことで知られるアルスターに住んでいたようです。しかし、この年に刊行した『ドリトル先生アフリカゆき』が全米で大評判となり、土木技師の仕事を辞めて専業作家として活動する決意をして1921年にコネチカット州マディソンへ転居し、そこで15年余りを過ごすのでした。
| 84oca | ヒュー・ロフティング伝 | 20:10 | comments(0) | trackbacks(0) |

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