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ヒュー・ロフティング伝(1)──2冊の伝記
『ドリトル先生』シリーズの作者、ヒュー・ジョン・ロフティング(Hugh John Lofting, 1886 - 1947)の伝記は、現在のところ日本では書籍の形では出版されていません。イギリスとアメリカではそれぞれ、1冊ずつ出版されているので今回はその2冊の伝記を紹介します。


 まず、1968年にイギリスのボドリー・ヘッドより刊行されたエドワード・ブリッシェン(Edward Blishen, 1920 - 1996)の評伝から。

 タイトルを見ていただければわかるように、本書はロフティングだけでなくジェフリー・トリーズ(Geoffrey Trease, 1909 - 1998)、ジェームズ・マシュー・バリー(James Matthew Barrie, 1860 - 1937)の評伝と合わせて1冊の本になっています。バリーの代表作は今更、説明不要の『ピーター・パン』(1908 - 1911年発表)で、もう一人のトリーズは『この湖にボート禁止 No Boats on Bannermere』で知られています。
 ブリッシェンはレオン・ガーフィールド(Leon Garfield, 1927 - 1996)との共著『ギリシア神話物語 The God Beneath the Sea』で1970年にカーネギー賞を受賞した他、チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens, 1812 - 1870)を始め数多くの作家の伝記を執筆しています。ロフティングの評伝もその中の一点として書かれたものですが、執筆された時期はアメリカで『アフリカゆき』における描写が人種差別的であるとして糾弾されていた時期に重なります。
 評伝の部分に関しては、次男のクリストファー(Christopher Clement Lofting, 1936 - )からの取材内容を含むものの参照文献が少なく、母親をイングランド人とするなど両親の家系に関する部分を始めとしていくつかの事実関係に誤りが見られます。

 次に、1992年にアメリカのトウェイン・パブリッシャーズより刊行されたゲイリー・シュミット(Gary D. Schmidt, 1957 - )の評伝。ブリッシェンのものと異なり、ロフティングのみを単独で扱った書籍は2012年現在でこれ一点のみです。

 シュミットはカルヴィン大学文学部教授で、自身も『最高の子 牛小屋と僕と大統領』(2005年)など何点かの小説を執筆しています。
 評伝の部分はブリッシェンのものと分量的に大きな差異は有りませんが、作品論に関してはブリッシェンのものよりも大きなウェイトを占めています。評伝の内容に関しては、次男のクリストファーだけでなく長女のエリザベス(Elizabeth Mary "Lynne" Lofting Mutrux, 1913 - 2002)と長男のコリン(Colin McMahon Lofting, 1915 - 1997)からも取材を行っている点は特筆すべきでしょう。ただ、ブリッシェンが両親の出自を誤っているのに引きずられたのか「ロフティング姓は母方のもの」とするのは誤りで、母方の旧姓はギャノン(Gannon)であることが1861年から1911年まで6回分の国勢調査記録などの資料により確認されます。別の機会に詳しく解説する予定ですがロフティング姓は紛れも無く父方のものであり、1920年にアメリカで行われた国勢調査記録でもヒュー自身が両親の出自について父のジョン・ブライアン・ロフティング(John Brien Lofting, 1857 - 1933)はイングランド人、母のエリザベス・A・ギャノン・ロフティング(Elizabeth A. Gannon Lofting, 1855 - 1939)はアイルランド人と記載しています。
| 84oca | ヒュー・ロフティング伝 | 04:00 | comments(0) | trackbacks(0) |

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