Lawnbowls

ある在野の文学研究者の行動記録。

お仕事募集中です。ご依頼は 84oca75 (アットマーク) gmail.com へお願いします。
解題『ドリトル先生アフリカゆき』(7)──オシツオサレツ
 猿の国を危機に陥れた伝染病を終息させたお礼に、猿たちは世にも珍しい双頭の動物──オシツオサレツをドリトル先生に献上します。
オシツオサレツとの初対面
オシツオサレツとの初対面(『ドリトル先生アフリカゆき』挿絵、ヒュー・ロフティング画)


 ドリトル先生が猿の国で一心不乱に治療と予防接種の投与を続けた結果、猿たちを苦しめていた伝染病は終息しました。猿たちはこの偉大な先生にいつまでも猿の国に留まって欲しいと願いますが、チーチーは先生がアフリカへ来る為にイギリスで借金を抱えていることを説明し、猿たちは知恵を出し合ってお礼を考えます。
 その結果、ヨーロッパの動物園でも未だ飼われていない世にも珍しい2つの頭を持った珍獣・オシツオサレツを献上することになりました。

 この「オシツオサレツ」という訳語は井伏鱒二のオリジナルで、原文では"pushmi-pullyu"("push me, pull you"が語源)とされています。但し、最初からこの訳語を思い付いていた訳ではないようで1951年以前の旧訳(光文社版『ドリトル先生アフリカ行き』、国立国会図書館・近代デジタルライブラリー)ではそのまま音訳して「プシュミプリュー」とされていました。本作を井伏鱒二に紹介した石井桃子(1907 - 2008)によれば、井伏は岩波少年文庫での改訳作業に際し「おしくらまんじゅう」に着想を得て「両方の頭と胴体が押しつ押されつ」しているという秀逸な訳語を思い付いたとされています。オリジナリティが際立ち過ぎるからか、他の日本語訳では余り継承されておらずソレオセヤレヒケ(訳・飯島淳秀、講談社文庫)、オシヒッキー(訳・麻野一哉、パブー)、フタマッタ(訳・小林みき、ポプラポケット文庫)、ボクコチキミアチ(訳・河合祥一郎、角川つばさ文庫)など様々に訳されています。

 このオシツオサレツは非常に恥ずかしがりで、最初はイギリスへ渡って見世物になることを嫌がるのですがドリトル先生との初対面で「この人は信頼出来そうだ」と一目で見抜き、着いて行くことを承諾します。2つの頭は人格(?)を共有している訳ではなく、それぞれ別々に物事を考えられるのですが、一方の頭がおしゃべりをする時はもう一方の頭が草を食べ、また一方の頭が眠っている時はもう一方の頭が人間や肉食動物の襲撃を警戒すると言った具合に分業を徹底しており、頭同士で喧嘩になることはまず無いのだそうです。純血種の動物ではなく、母方の血統はアジア種の小カモシカで父方の曾祖父は絶滅してしまった一角獣(ユニコーン)の最後の一頭だったと言います。
 こうしてドリトル家に新しい仲間が加わることになったのですが、猿の国を後にした先生たちは待ち伏せしていたジョリギンキの兵士たちに捕まり、再び投獄されてしまったのたでした。

 さて、オシツオサレツは見た目のインパクトが強いことも有ってか後々の作品でもリスペクトされており、"pushmi-pullyu"ないし「オシツオサレツ」の名前を持つ双頭の動物が色々と登場します。一例を挙げると、コンピュータRPG「ウルティマVI 偽りの預言者」やアニメ「世紀末オカルト学院」第5話など。
| 84oca | ドリトル先生アフリカゆき | 08:33 | comments(0) | trackbacks(0) |

コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://lawnbowls.blog.bai.ne.jp/trackback/196180
トラックバック

CALENDAR
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2017 >>
RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND RECOMMEND COMMENTS
RECENT TRACKBACK
  • 解題『ドリトル先生局』──『郵便局』と『サーカス』はどっちが先?
    Lawnbowls (08/05)
  • ヒュー・ロフティング伝(4)──ナイジェリア時代
    Lawnbowls (07/11)
  • 解題『ドリトル先生アフリカゆき』(8)──人種差別問題
    Lawnbowls (06/07)
CATEGORIES ARCHIVES LINKS PROFILE OTHERS