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ある在野の文学研究者の行動記録。

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解題『ドリトル先生アフリカゆき』(5)──オウムのポリネシア
 アフリカ生まれで、自称するところによれば180歳を超える雌の灰色オウム・ポリネシアは猿たちを伝染病から救う為に旅立ちを決意したドリトル先生の案内役を買って出ます。
アフリカへ出発
アフリカへ出発(『ドリトル先生アフリカゆき』挿絵、ヒュー・ロフティング画)

 ドリトル先生の妹・サラがお嫁に行ってしまい、ドリトル家の動物たちは分担して家事を行うことにしました。しかし、お金を稼げないので先生は貯金箱をひっくり返しても1ペニーすら残っていない文字通りの一文無しになってしまい、冬を迎えます。
 そして、特に冷え込みが厳しい日に季節外れのツバメがアフリカからドリトル家に舞い込んで来ました。ツバメはアフリカの猿たちの間に深刻な伝染病が広まり、危機に瀕していることを知らせます。この一報に居ても立ってもいられなくなったドリトル先生は、お金のことなど二の次で一隻の船を借りて動物たちを連れ、アフリカへの航海に出発します。

 ドリトル先生に動物の言葉を教えたオウムのポリネシアは自称、182歳か183歳。アフリカ生まれで、イギリスへ初めて渡った時はチャールズ2世(Charles II, 1630 - 1685)が皇太子時代、護国卿・クロムウェル(Oliver Cromwell, 1599 - 1658)の軍勢に敗走してカシの木の洞に隠れていたのを目撃したと1651年の故事を回想するほどの長生きで、また文字通り「おばあさんの知恵袋」と言うべき卓越した記憶力を持ち合わせています。ドリトル家で飼われる以前はギリシャ語を専攻する大学教授やスウェーデン人の船乗りに飼われていました。それで、悪態を吐くときは人間にも動物にもわからないようにスウェーデン語を使う癖がありますが、機嫌が良い時は船歌を披露してくれます──こんな感じに。
I've seen the Black Sea and the Red Sea;
 I rounded the Isle of Wight;
I discovered the Yellow River,
 And the Orange too―by night.

Now Greenland drops behind again,
 And I sail the ocean Blue,
I'm tired of all these colors,
 Jane, So I'm coming back to you.

おれは黒海も見た 紅海も見た
 ワイト島もめぐってきた
黄河も見てきたし
 夜のオレンジ川も見てきたよ

グリーンランドが視界に消えて
 いま青海原にただよっている
色という色にも あき果てた
 ジェイン おれはもうおまえのところに帰るんだ

(訳・井伏鱒二)
 先のチャールズ2世の故事(岩波版の注釈で父王のチャールズ1世とするのは誤り)から逆算すると『アフリカゆき』の時代設定は1820年代後半から1830年代の前半、ジョージ4世(George IV, 在位:1820 - 1830)かその弟のウィリアム4世(William IV, 在位:1830 - 1837)の治世ということになるでしょうか。世界中に植民地を拡大して行った大英帝国の威容華やかなりしヴィクトリア女王(Queen Victoria, 在位:1837 - 1901)の治世、いわゆるヴィクトリア朝の前夜に当たる時代です。

 航海の途中は大きなトラブルも無くアフリカに近付きました──そう、近付きました。ところが、あと一漕ぎでアフリカに到着するという所で嵐に見舞われ、先生たちの乗った船は岩にぶち当たって座礁してしまいます。そして、命からがらアフリカ大陸に上陸した先生たちの前にこの一帯を統治するジョリギンキ王国の兵士が現れ、否応なく国王の前に連れ出されたのでした。
| 84oca | ドリトル先生アフリカゆき | 05:26 | comments(0) | trackbacks(0) |

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