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未邦訳絵本『おかゆ詩集』
 ガジェット通信に紹介記事を書かせていただきました。

『ドリトル先生』の作者・ロフティングが書いた未邦訳の絵本『おかゆ詩集』
| 84oca | ドリトル先生以外のHL作品 | 22:06 | comments(0) | trackbacks(0) |
解題『タブスおばあさんと三匹のおはなし』(後)
『タブスおばあさん』は、イングランドが舞台であることを除いて『ドリトル先生』とストーリーや登場キャラクターなどの接点はありません。しかし、動物たちが知恵を出し合って直面する難題に立ち向かうというシチュエーションには『ドリトル先生』との共通点を見出すことが出来ます。
『タブスおばあさんと三匹のおはなし』挿絵
タブスおばあさんと三匹のおはなし』挿絵
(ヒュー・ロフティング画)

 この物語の主人公は100歳を超える長生きのタブスおばあさん(Mrs. Tubbs)ですが、おばあさんはドリトル先生のように動物と会話が出来る訳では無く、困ったことが起きてもただうろたえるばかりで決断力や行動力を持ち合わせている訳でもありません。それでも、動物に対する愛情の深さではドリトル先生に負けず劣らずのものを持ち合わせていて、動物に優しいおばあさんが大好きな動物たちが恩返しの為に知恵を出し合って奮闘するというのがこの物語の基本設定です。

 おばあさんが特に可愛がっているのは子豚のパトリック・ピンク(Patrick Pink)、アヒルのポリー・ポンク(Polly Ponk)、犬のピーター・パンク(Peter Punk)。それぞれのキャラクター類型は『ドリトル先生』に登場するガブガブ、ダブダブ、ジップと同じと考えていただいても全く問題ありません。
 タブスおばあさんは農場にピンク・パンク・ポンクと住んでいましたがある日、農場の所有者から「ロンドンに住んでいる甥を住まわせることにしたから出て行ってくれ」と言われ、おばあさんは行く宛も無いまま農場を追い出されてしまいます。
 年老いて一人では食糧を調達することもままならないおばあさんの為にピンクは鼻でトリュフを掘り、ポンクは羽毛で枕を作り、パンクは薪を拾い集めてうろたえるおばあさんを懸命に元気付けます。
 そこへ、三匹はたまたま小川で水浴びをしていた水ネズミ(ミズハタネズミのこと。オセアニア原産のミズネズミではない)の王様、トミー・スキーク(Tommy Skeak)に出くわしました。以前におばあさんの食糧庫でチーズをかじっていた所を見逃してもらったトミーは三匹の頼みを聞き入れ、近隣のネズミをかき集めて農場を徹底的に荒らしました。しかし、農場主の甥はロンドンから三千匹の猫を連れて来たのでトミー率いるネズミたちは一目散に逃げ出してしまいます。
 三匹は次にツバメの女王、ティリー・ツイッター(Tilly Twitter)と出会います。ティリーも以前に巣から雛鳥が落っこちてしまった時に雛鳥へ襲いかかったイタチをおばあさんが追い払い、何も言わずに巣へ戻してくれた恩義があるので三匹の頼みを聞き入れ、ツバメの大軍を率いて農場を泥だらけにします。しかし、ティリー率いるツバメの大群も三千匹の猫を相手に苦戦を強いられ、この作戦も失敗に終わってしまいました。
 もう打つ手が無いと三匹が諦めかけ、ひとまずおばあさんの寝床を探そうとパンクが大木の洞を覗き込んだその時。その木に巣を作っていたスズメバチの大群がパンクに襲いかかって来ました。パンクが一目散に農場へ駆け込むと、パンクを追って来たスズメバチは農場主の甥を襲ったのでたまりかねた甥は「ロンドンへ帰る」と言い出し、タブスおばあさんは再び農場で三匹と一緒に暮らせるようになったのでした。

 本作の続編『トミーとティリーとタブスおばあさん Tommy, Tilly and Mrs. Tubbs』はかなり間が開いて13年後の1936年に刊行されました。本作を刊行した1923年はロフティングの生涯で最も輝かしい時期だったのに対し、続編『トミーとティリー』を刊行した1936年は度重なる悲劇を乗り越えてジョセフィン・フリッカーと再々婚し、15年を過ごしたコネチカットを離れて転居したロサンゼルスで次男のクリストファー(Christopher Clement Lofting, 1936 - )が誕生した年でした。
| 84oca | ドリトル先生以外のHL作品 | 16:04 | comments(0) | trackbacks(0) |
解題『タブスおばあさんと三匹のおはなし』(前)
 ヒュー・ロフティングが61年の生涯に残した作品の過半数は『ドリトル先生』(全12巻+番外編1巻)でしたが、それ以外の作品も何点か刊行されています。絵本が4点と小説が1点、そして詩が1点です(初めて書いた短編小説『排水溝と橋 Culverts and a Bridge』はこの中には含まれていません)。
 今回は『ドリトル先生航海記』と『ドリトル先生の郵便局』の合間に当たる1923年に刊行された初めての絵本『タブスおばあさんと三匹のおはなし The Story of Mrs. Tubbs』を紹介します。
『タブスおばあさんと三匹のおはなし』表紙
タブスおばあさんと三匹のおはなし』ストークス版表紙
(ヒュー・ロフティング画、1923年)

 この絵本は1923年に『ドリトル先生』と同じアメリカの出版社、F・A・ストークスより刊行され翌1924年にはイギリスでジョナサン・ケープより刊行されました。日本における最初の紹介は1954年で、岩波書店から光吉夏弥(1904 - 1988)の訳により『もりのおばあさん』の表題で刊行されています。この際は「フクちゃん」で有名な漫画家の横山隆一(1909 - 2001)が挿絵を描きました。


 それから50年以上が経ち米英でも原書は既に絶版となって久しいのですが、日本では幼少期に読んだ『ドリトル先生』の影響で英文学を志した小説家で英文学者の南條竹則氏が2010年に集英社から新訳版を刊行しました。


 この新訳版では、岩波版と異なりロフティングが描いた挿絵を使用しています。
 光吉訳『もりのおばあさん』は固有名詞なども含めて全てひらがな表記で本当に未就学児から小学校低学年向けになっているのに対し、南條訳『タブスおばあさんと三匹のおはなし』は小学校で教えない漢字も多用されており(読み仮名は振られています)、光吉訳よりも年齢層は高めで『ドリトル先生』に親しんでいる小学校中・高学年の児童や大人の『ドリトル先生』ファン向けと言えるでしょう。実際、発行元の集英社では対象年齢を「小学生」としており、岩波版より高めの年齢を想定しているようです。



| 84oca | ドリトル先生以外のHL作品 | 16:30 | comments(0) | trackbacks(0) |


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